個人にできることは少ない。まずは自分を壊さないことから

個人ができることは、思っているほど多くない。
自分がニュースを見て、何を考えようと、それだけで日本が変わるわけではない。
誰かが結婚して離婚しても、どこかの大企業の業績が変わっても、政治家が不祥事を起こしても、自分一人が直接動かせる範囲には限界がある。
どんなに悪を否定しても、どんなに素晴らしい発見をしても、どれだけ経験を積んでも、それだけで社会が自分を認知してくれるわけでも、助けてくれるわけでもない。
だからこそ、個人について考えるときは、いったん社会から離れて、自分自身のところまで降りてみる必要がある。
社会は、組織からできている。
組織は、家族や人間関係からできている。
そして、その一番小さいところには、一人ひとりの生活と精神がある。
個人にできることを考えるなら、まず自分自身を壊さないことから始まる。
朝、健康であることに感謝して起きられるか。
起きて、水を飲み、薬を飲み、身だしなみを整えられるか。
余力を残して風呂に入れるか。
ご飯を食べられるか。
スキンケアや歯磨きができるか。
然るべきときに、爪を切り、眉毛を整え、散髪できるか。
整理整頓された部屋で、バランスのよい食事をとる。
こうしたことができているなら、それだけでも十分に幸せな人生だと思う。
そして、できない日があってもいい。
できない自分を、さらに否定しないことも同じくらい大切だ。
前向きになれなくてもいい。
自信満々でなくてもいい。
少なくとも、自分で自分をマイナスにしない。
ここが、個人が外側へ向かうための出発点になる。
精神が安定すれば、生活を整えられる。
生活が整えば、人と関わる余力が生まれる。
そこで初めて、自分の外側にいる人との関係を考えられる。
たとえば、話すのが苦手でもいい。
「話すのが苦手なのはダメなことだ」と自己否定する必要はない。
話すことが苦手なら、苦手なままでもいい。
大切なのは、苦手であることと、自分を否定することを同じにしないことだ。
自分をゼロに戻す。
そこから、自分の生活を整える。
そして、少しずつ他者との関係へ進んでいく。
個人にできることは少ない。
けれど、個人ができることが少ないことと、個人に意味がないことは同じではない。
自分を安定させること。
周囲の人との関係を壊さないこと。
その先にある家族や組織との関係を整えていくこと。
そうやって、一人の安定が少しずつ外側へ広がっていく。
どこまで登るかは、その人次第なのだと思う。